コンピューターで加速する化学研究


化学の研究では,実験台に向かって様々な検討を繰り返す中で打開策を見出していきます。多くの科学者の地道な努力によって,さまざまな合成法が見いだされ,多様な機能性物質が生み出されてきました。それに加えて最近では,PC上で量子化学計算やデータ駆動型の反応・物質開発が盛んに行われています。本研究室では、実際の化学研究を加速させるために,PC上でのシミュレーションと実実験を組み合わせた検討を行っています。量子化学計算ではGaussianを,データ駆動型研究ではPythonを用います。

 

DFT計算で解き明かす不安定な反応中間体


リン触媒を用いたイソシアネートのオリゴマー化はコーティング技術開発等において重要です。この反応の反応機構はRichterらによってリアルタイムIRやNMRを用いて解析されていましたが,実際の中間体の構造等は秋からになっていませんでした。そのような背景のもと,LMUのZipse教授と共同で,Gaussianを用いた反応経路推定とNMRスペクトル予測を行い,実際のNMR実験の結果と照らし合わせ,より確かな中間体・反応経路を提案しました (Chem. Eur. J. 2018)。本研究がより高活性な触媒の開発に利用されると期待されます。

 

適切な分離条件の提案


ガスクロマトグラフィー(GC)や液体クロマトグラフィー(HPLC)などのクロマトグラフィーは,化学物質を分離・分析する重要な手法で,サンプル中に含まれる化学物質の同定や純度測定などに用いられています。この分析では分離する条件が重要であり,その条件が整っていないと正しい分析はできません。そして,この分析条件の設定は分析者の経験値とトライ&エラーに依る部分が多分に含まれます。本研究では,データ解析より得られた統計モデルを用い,クロマトグラフィー分析条件の提案を行います。

 

新しい構造的特徴量の提案


上述の統計モデルにはさまざまな説明変数を用います。この説明変数はRDKitやデータベースから引き出し,それらを組み合わせて回帰分析を行います。しかしながら、一般的なデータベースから得られる変数だけでなく,モデルを構築したい現象をよく考察し,それをよく説明する新しい特徴量の設定は回帰分析の精度を高めることが期待されます。本研究では、対象とする現象に即した新たな特徴量を機械的に抽出するプログラムを作成します。提案された特徴量を用いて反応開発や上述の分析手法提案に展開します。

 

スペクトル解析支援プログラムの開発


「はかる」グループで得られたデータ解析を支援するプログラムの作成を行っています。例えば、19F NMRを用いたアミン類の一斉分析では多数のピークが同時に検出され、それらの組み合わせを考える必要があります。これには、比較的熟練度の高いスペクトル解析能力が要求されますが、本研究では、これを自動で抽出できるようにし、スペクトル解析を支援するプログラムを作成しています。そのほか、GC-MS解析支援を行う新しいプログラムの開発も行っています。