ルテニウム錯体
◆Xantphos-Ru錯体
大きなBite-Angleと剛直な骨格をもつXantphosはさまざまな遷移金属錯体触媒反応に利用され,特徴的な反応効率や選択性を示すことが知られています。当研究室では,三種のXantphos-Ru錯体の簡便な合成法を開発し,オレフィンへのカルボン酸の付加反応への応用を報告しています(Higashi et al. J. Organomet. Chem. 2015).
◆新奇で汎用性の高い高分子担持ルテニウム錯体
これまでにない珍しい担持法によって,種々の有用なルテニウム錯体へと展開できる汎用性の高い高分子担持ルテニウム錯体の合成に取り組んでいます.
◆医への応用を目指したルテニウム錯体
最近,NAMI-AやPAPTAファミリーのように医薬品候補としてルテニウム錯体が注目されています.当研究室では,これまでに触媒反応への利用で培ったルテニウム錯体の設計・合成技術を駆使して,直接医薬品になり得るだけでなく,さまざまな用途で医へ応用できるルテニウム錯体の合成に取り組んでいます.
これらの錯体を利用するにあたり,水中での機能が重要になります.そこで,新しい水中機能性錯体をつくるための基礎研究を行い,新しいタイプのルテニウム錯体が水中でミセルを形成することを見出しました.ミセルは石鹸のように通常水には溶けない脂溶性物質(油)を水に分散することができます.下の写真では,通常水に溶けないSudan-IIIという色素がこのルテニウム錯体のミセルのおかげで水に分散している様子を示しています.錯体の濃度が高いほど,より多くのSudan-IIIが分散されています(Wakabayashi et al. under preparation).また,酸性度に応答する部位をもたせたミセルは,中性から酸性ではミセル構造を保てますが,塩基性になると分子構造の変化に伴いミセルが崩れることも明らかになりました.これより,pHによる機能のコントロールが期待できます.
不斉合成
◆有機ホウ素化合物の不斉1,4-付加反応
面不斉と点不斉を併せもつフェロセン配位子とPd(dba)2から調製されるパラジウム錯体は,α, β-不飽和カルボニル化合物への有機ホウ素化合物の不斉1,4-付加反応に効果的であることを見出しました(Suzuma et al. Tetrahedron: Asymmtry, 2009).また,同様の触媒の不斉α-アミノ酸合成、α-分岐カルボン酸合成への応用も検討しています(Maeda & Hayashi et al. to be published).