FRET分子プローブ
発光スペクトルと吸収スペクトルに重なりをもつ蛍光体と消光体がある一定の距離内にあるとき、蛍光体の蛍光は消光体によりクエンチ(消光)されます。これはFRET現象のひとつです。当研究室では、この現象を利用した分子プローブを開発しています。すなわち、ペプチドもしくはアミノ酸を介在して蛍光体と消光体を結びつけておきます。この時点では、FRETが効くので、蛍光はOFFとなります。ここでこの分子のペプチド結合またはアミド結合が切れると、蛍光体-消光体間の距離が離れるため、FRETが解消され、蛍光がONになります(図1)。酵素は基質を選んで反応することが多いため、分子をうまく設計すると、目的の酵素を蛍光のON-OFFによって検出することができるようになります。これまでに、この機能をもち、トリプシンまたはキモトリプシンを検出できる分子プローブを開発しました。現在、この系の実用性等を吟味しています。
図1 FRETプローブのイメージ
チオールの検出
メルカプト基(SH)はシステインや還元型のグルタチオンに含まれ、多くの生体内反応にも関与する重要な官能基です。また、チオール類は悪臭の原因であったり、歯周病の進行度の指標ともなり得ることがわかっています。当研究室では、市販の原料から簡単に合成できるプローブ分子を合成し、それを用いた種々のアミノ酸の中からシステインやグルタチオンといったメルカプト基を含むものだけを選択的に検出できるシステムを開発することができました(図2)。現在、この系の実用性等を吟味しています。
図2 SHの検出(SHをもつCys, GRのみ、黄色に呈色)